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行政書士のプロローグ & モノローグ

法律、経済、文化、福祉、雑談etc. 

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美談の男(尾形誠規著、鉄人社)

 サブタイトルは、「冤罪袴田事件を裁いた元主任裁判官・熊本典道の秘密」である。 袴田事件と言えば、菅家利和さんの足利事件同様、冤罪の可能性がきわめて高いと言われているが、その第一審の裁判官が、無罪心証だったにもかかわらず、他の二人の裁判官が認定したため、心ならずも有罪判決を書いてしまったと、涙ながらに語ったシーンは今でも記憶に新しい。この時の判事が、熊本典道氏である。良心的裁判官の典型、裁判官の鑑としてもてはやされたが、熊本氏にはもう一つの顔があった。熊本氏はその後裁判官を退任し、弁護士となったが、これを発表した当時、弁護士登録を抹消し、ホームレス同然の生活ををしていたというのだ。熊本氏の人生の闇の部分に、綿密な取材に基づいて光を当てたのが、本書である。
 よく「事実は小説より奇なり」というが、「事実は小説の如し」というのが、私の率直な読後感である。罪の意識に苛まれ破滅的な人生を送ってしまうというのは、物語としてはありふれたストーリーに属するが、それを地で行った人間が本当に実在したというのは、正直言って驚きである。
 ちなみに、私はこの本の著者、尾形氏とは面識がある(と言っても、名刺を交換した程度だが……)。15年ほど前、私がまだ編集者だった時のことで、当時彼は、「ラジオライフ」(三才ブックス)の編集者をしていた。尾形氏は、同社で「裏モノの本」を企画し、いかがわしい通信販売の実態をリポートしたりし話題を呼ぶ。その後独立し、「裏ウラモノJAPAN」(鉄人社)を創刊し、 その常連ライターには今をときめく北尾トロ氏がいる。
 しかし、この本は正直言って、出来があまりよくない。裏モノ系の軽佻浮薄なタッチが前面に出てしまい、重厚な作品には仕上がらなかったからだ。一級の人物の悲劇を扱うには、この種の筆致はいかがなものか。彼は有能な編集者なのだから、自身のライターとしての限界を見極め、しかるべきアンカーにバトンタッチすべきではなかったのか。もし、この取材を下に、野島進や斎藤貴男等の力のあるノンフィクションライターがまとめれば、もっと読み応えのある素晴らしい作品になっていたかと思うと、惜しい気がしてならない。ただ、ネタだけはすごいので、読者を引き込む力は十分にある。


http://www.gyouseisyosi.jp/
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