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行政書士のプロローグ & モノローグ

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「文明の衝突と21世紀の日本」(サミュエル・ハンチントン著 集英社新書)

 文明の衝突論が話題を呼んだのは大分以前のことなので、遅すぎた感があるが、ようやく目を通すことができた。この本は、世界的ベストセラーとなった『文明の衝突』(集英社)の要約版であるが、この思想を知る上で十分なボリュームを持っている。また、冒頭に「21世紀の日本の選択」という章を設け、日本の読者にとってとりわけ興味深い内容となっている。
 冷戦によるイエデオロギーの対立が終焉し、アメリカ一人勝ちの状況の中で、フランシス・フククヤマの「歴史の終わり」が注目を集め、アメリカ流資本主義が人類史の最終形態であるかの如き幻想が振りまかれた。しかし、それもほんの束の間のことで、アメリカの影響力は相対的に減少しはじめ、格差社会の激化によりグローバリズムの本質的問題点が浮き彫りとなり指摘されだした。そういった中で登場したのが、この文明の衝突論である。
 これは、イエデオロギーによる東西二大陣営による対立が終わった後、諸国は文明という新たなカテゴリーの下に集結し、異質な文明間の対立・抗争が頻発化するというものだ。ハンチントンの言う文明とは、要するにアイデンティティを担うもので、その中核的要素は宗教である。著者は、世界の主要文明を、①西欧文明、②東方正教会文明、③中華文明、④日本文明、⑤イスラム文明、⑥ヒンドゥー文明、⑦ラテンアメリカ文明、⑧アフリカ文明、の八つに分類している。これらの多くは国境を横断して広がっているものだが、日本だけは例外で、国境と文明の範囲が一致している。このような国は、他にはエチオピア(コプト正教会)とハイチ(ブードゥー教)ぐらいだと言う。
 著者は、イスラム文明の戦闘性に警鐘をならしてきたが、これは2001年の9.11の同時多発テロによって現実のものとなる。また、イスラム教徒がジハードなどと言って戦闘的になりやすいことの背景には、平均年齢の低さがあるとも指摘する。人口に占める若年層(15歳から24歳)の割合が20パーセントを超えると、暴力や紛争がエスカレートし、社会は不安定になるのだという。
 さらに、ハンチントンは、一極多極世界というシステムを提唱し、これによって世界の動きを読み解こうとした。世界は、アメリカという超大国と、ヨーロッパ、ユーラシア、東アジア等の地域大国と、ナンバー2の国、またその他の国、という四つのレベルから成り立ち、この構造によって支配されているというのだ。東アジアにおける地域大国は日本か中国だが、ハンチントンは中国の方がその可能性が高いと見ている。いずれにせよ、一極多極世界のシステムが通用するのは今後30年ぐらいのことで、その先はどうなるかわからないということだ。
 ハンチントンの文明の衝突論は論争を呼んだというが、私にとってはきわめて説得力のある説であり、ほとんど違和感がないと言ってもいい。日本が中国の下になるというのは、少し残念な気もするが、それはすでに現実のものとなりつつある。経済偏重の見方が世の中にはびこり、グローバリズムが席巻し荒廃させている中、文化や宗教、価値観を基軸としたパワーが、世界を動かす駆動力になるというのは、むしろ望ましいことのようにも思える。
 ところで、文明の中核的要素は宗教というが、日本文明の場合は、いったい何を意味するのだろうか? 私には、「武士道」と言った言葉が思い浮かんでくるのだが……


http://www.gyouseisyosi.jp/

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