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行政書士のプロローグ & モノローグ

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マルクスだったらこう考える(的場昭弘、光文社新書)

 「蟹工船」が売れるマルクスリバイバルの風潮の中で、著者もまた人気急上昇中である。NHK教育テレビの「一週間 de 資本論」では司会を務め、また、「超訳『資本論』」 (祥伝社新書) を刊行し、いわば難解なマルクス主義思想を平易に噛み砕いて、格差社会に生きる若者たちに説いて回っている。
 本書は2004年に刊行されたもので、この路線に切りかえてからの、最初の仕事であると思われる。そのせいか、けっしてとっつきやすい本ではない。何しろ、実存主義や構造主義を踏まえマルクス主義について論じているのだから、ある程度の予備知識がなければ、いくら文章を平易にしたところで理解できるはずもない。
 NHKテレビで語っていたところによれば、資本主義のグローバル化によって、今ようやくマルクスを語りうる時代になってきた、ということだ。そして、社会主義革命や共産主義革命にしても近視眼的に見るのではなく、百年、千年のスパンで見ていかなければならないのだという。
 なぜグローバル化しなければ資本主義の本当の意味がわからないかと言えば、例えば、90年代以前の日本のように、貧困や公害を第三世界に押し付けることによって、豊かな社会を実現することができてしまうからだ。しかし、グローバル化の進展によって、先進国だけがそのような果実を受け取ることはもはや不可能となり、むき出しの資本主義がその正体を顕わにし、暴走をはじめた。そして著者は、一国社会主義ではやはりダメで、世界同時革命でなければならない、と明言する。昔、過激派のことをトロツキストと呼んでいたが、要するに著者はトロツキストということらしい。
 また、本著の中では、構造主義についても紹介されているが、西欧近代主義を相対化し独自の文化的パラダイムを認める構造主義と近代主義の亜流であるマルクス主義とが、どう折り合いをつけるのか、今一つよくわからなかった。さらに、女性や外国人労働者、開発途上国など、要はマイノリティを、「他者」という言葉で一くくりにし、最後に、「すべての地域の労働者よ、団結せよ」ではなく、「すべての地域の『他者』よ、団結せよ」なのだと結んでいるが、この辺のところも判然としなかった。
 一番興味をひいたのは、各章末のコラムである。ここには、マルクスは女癖が悪かったとか、マルクス一家は結構ぜいたくな暮らしをしており、マルクス自身労働者が嫌いだったなどと、従来のマルクス主義者ならけして語りたがらないエピソードについてあえて触れていた。

 著者は、団塊の世代より少し後の世代で、中学生の頃に興味を覚えて以来、ずっとマルクス一筋でこれまで来た。1970年代は大学にはマル経の学者たちが大勢いたが、徐々に減っていき、今ではそのおもかげすらない。いわば最も厳しい受難の時期にマルクス主義研究者として活動を続け、初志を貫徹してきたわけだ。だから、筋金入りであることには違いない。
 その後の著作を読んでいないので何とも言えないが、本書に関してはやはり難解かつ抽象的という印象が拭えない。著者の専門はマルクス主義経済学のはずだが、全体として思想・哲学的な方面への関心が強いような気がする。現在、資本主義の矛盾が一気に噴き上げていることは誰もが認めるとこだろう。しかし、ソ連を初めとする社会主義諸国の凋落によって、その先に社会主義や共産主義社会が見えてこないというのも、人々が感じているところだ。マルクスの預言が現実のものとなっている今、長年の研究成果を生かして、我々が今立っている足元と一歩先の未来を照らしだしてほしいと思う。


http://www.gyouseisyosi.jp/

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